鮮やかなブルーフィニッシュが特徴的なシリコンファズフェイス

”FUZZ FACE”ロゴやVOLUME/FUZZ表記がデカール/ステッカーではなくプリントされています。この仕様は1970年ごろまでの生産にみられ、この個体にも1970年のポットが搭載されています。内部に”HJM3316”表記入りのお馴染みの筐体はおそらく1969年ごろから採用されたと思われます。

タツノオトシゴマークのRENDAR社ジャック、BULGINのフットスイッチ(黒)もお馴染みの仕様と言えますが、よく見るとRENDARのジャックの質感が違います。69年のファズフェイスに使用されていた物に比べると成型が綺麗になった印象で、エッジが立っています。ひょっとすると素材や製造機の変更があったのかもしれません。

ポットは今で言うCITEC/OMEG型でFUZZが1K、VOLUMEが500KΩのもの。実測値で+50Ωくらいズレています。基板上のパーツを見ていきます。

トランジスタはBC109CでブランドはMicro Electronics(以下MC)となっています。

Micro Electronicsは1964年に設立された香港の会社で、電子部品の卸などを行っていたそう。イギリスと香港の関係から考えて、このトランジスタがオリジナル(交換されていない)とすると、Philips-Mullard, AEG-Telefunkenなど、1965年以降BC109Cを製造していたブランドの製品にMCのプリントをして輸出していたのかもしれません。もちろん、後年に交換された可能性もありますが見た目では年代の判別が難しいところ。私には古いトランジスタに見えますが、他の人に言わせれば「明らかに新しい時代のもの」と言うことでした。リードが金メッキという点はTFK BC108等と同じです。

抵抗類はカーボンでRS/Morganiteでしょうか。コンデンサ類はムラードの60年代トロピカルフィッシュ、ブルーの電解コンデンサもおそらくムラードですが、値が5.4という謎な仕様。シルバーのコンデンサはSPRAGUE 30Dで、ロッドNOから67年のものと思われます。

基板裏側を見るとハンダ箇所が怪しいですね。補修もしくは積極的なパーツ交換の形跡かもしれません。

これらパーツの整合性と基板裏をチェックしてみる限り、後年の修理/再チューニング品の可能性も高いという結論になりました。とにかくこのブルーの1970 FUZZ FACEに関しては、他の個体でも微妙に修理/手入れが入っていたりして、フルオリジナルの個体がなかなか見つかりません。複数台見比べてみないと、どこまでがオリジナルか?と言う判断ができません。しかし1970年前後のファズフェイスの修理であれば、TFKとまでは行かずともPhilipsなどのトランジスタが簡単に手に入るはずなのでに、なぜMCのBC109Cを使ったのか?やはりトランジスタは70年代のオリジナルなのでは?などと思ってしまいます。そもそもMCのBC109なんてどこで手に入れたのか?

70年以降のファズフェイスで使用されているものと同じく、鉄板を折り曲げたバッテリーホルダー。70年以降は筐体にこのバッテリーホルダーが固定されますが、この個体ではボトムパネルに取り付けられています。筐体側にネジ穴は確認できないので当初からこの位置に固定されていたと思われます。後年のモデルでボトムパネルに不要な穴の空いたものが存在しますが、この年代のボトムパネルを流用していたと思われます。バッテリースナップはKEYSTONEですが、66年や68年型の様な片側がブラス端子になっておらず、プラス/マイナス共にニッケル。

ゴム足は他の年代では見られないタイプで、こちらは取り外すのが難しいので、おそらくオリジナルだと思われます。ボトムプレートを固定するビスはエッジの立ったマイナス側型です。ビス径は3.5mmでボトムプレート厚は1.25mmで重量のあるスチール製が採用されています。