基本的に1960年台から70年代位までのヴィンテージファズと質感に「異様」に心惹かれる私のような人間にとって、80年代以降のファズはどうも面白みに欠けます。もちろん、80年代以降(というか2000年以降)にも良いファズは沢山あると思います。しかしながら、それらの多くが60年代から70年代のファズのレプリカや古いコンポーネントを用いて同じ回路を焼き回した改悪とも言える製品(と私は感じます)だったりします。「だったら当時のヴィンテージ機材を手に入れた方が早いんじゃない?」もしくは「まったく新しいモダンな機材の方が良いのでは?」と思っていました。コーニッシュ製品を試すまでは…

ニールヤングとルーリードとケヴィンシールズ​

この音。ニールヤングは絶対ファズを使っているんだと思っていた。確かに若い頃のニールヤングの画像を見ると足元にイタリアン・トーンベンダーと思わしきペダルが置いてある。でもこの音はファズの音ではない。アンプのサウンドなんだけどい、アンプ直結でその音が出るわけじゃなさそうで。ペダルボードにはいわゆる「ファズ」や「ブースター」「オーバードライブ」などは納められていない。でも多分、アンプの手前から「何か」でブーストしているんだと思う。Alesisのリヴァーブをアンプの前に置いているから、そのインプットレベルとアウトプットレベルを操作してアンプを想像以上にブーストすることもできる。これはAlesis以外… YAMAHA SPXやKORG SDDでも同じことができる。つまり、ニールヤングの機材は例のWizardと人力でライブ中に細かくコントロールされているということだろうか…とにかく、ニールヤングの(ファズは使っていないけど)ファズサウンドは最高だと思った。


で、その後、同じような音を他でも聴いた。ルーリードのアルバム「Extacy」の中の1曲 “Like a Possum” この音、とにかく「最高のファズ」だと思った。

その頃、日本にもピートコーニッシュのスタンドアローン・ペダルが輸入され始めていた。そして、ルーリードの来日公演に合わせてピートコーニッシュも来日していた。インタヴューか何かで「N.G.FUZZ」の話を読んだ。「ルーリードの要望で生まれたペダルだ」と言ったような内容で、このペダルの説明は非常に興味深い。

「一般的に販売されているファズボックスのサウンドのレンジが1から10までだとすると、N.G.FUZZは「15」まであります。このカスタムメイドのユニットは、”故障寸前の真空管アンプサウンド(I.A.D) “をシミュレートするために特別に設計されており、ユーザーが求める “I.A.D. “の度合いに合わせて音色を作り出せるように、いくつかの独立したステージを備えています。

第1ステージは最大+26dBのゲインを持つリニアドライブ。第2ステージは安定化されたゲルマニウム・プリアンプ。オーバードライブ時にスムーズにオーバーロードします。3段目は、オーバーバイアスがかかった真空管アンプや、真空管や出力トランスの深刻な故障(ヒューズが切れる直前の音)をシミュレート。まさに「NGマジック」を生み出すセクションです。
SUSTAINコントロールは、第2ステージから第3ステージへ向かう信号レベルを調整し、これにより「寿命が近づく出力管」から「溶けた真空管とショートした出力トランスの生み出す音」まで作り出すことができます。TONEとVOLUMEコントロールを調整することでアンサンブルが完成します。このペダルのサウンドを堪能するには、クリーンでピュアなトーンをスピーカーに大量に供給できるアンプに接続してください」

from Pete CORNISH

つまり、NG FUZZはファズではなく、ちょっとイカれた真空管アンプのサウンドを再現するペダルなのだという事。2000年当時、このペダルを購入しようと思ってチェックした。その時、TESとSUPER WAHもチェックして、。なぜかその頃の自分にはNG FUZZよりSUPER WAHの方が魅力的だった。多分、板(ウッドボード)に乗っていたのが格好よかった、とかそんな理由だったと思う。しかし、購入したSUPER WAHはもちろん、素晴らしいけど、よそ見をせずにN.G.FUZZを買っておくべきだった。

その後、N.G.FUZZはNG-2となり、少し仕様が変わった。音は結構違う気がする。コーニッシュ曰くその違いは

N.G.FUZZにはバイアス回路がありません。さらに、ごく初期のものにはドライブコントロールがないものもあります。NG-2はドライブ・コントロールとバイアスを備えており、製造時に私がバイアスを設定しています。NG-3は、ユーザーが調整可能なバイアス・コントロールを備えています。これはルー・リードからのリクエストに答えたもので、彼はあるNG-3のある設定において、逆再生されている様なサウンドが得られることを発見たのです。また現在、そして過去のNGシリーズファズ/すべてのバージョンにおいて、部品が製造中止になった場合、代替部品を使用しなければならないため、音に若干の違いが生じることがあります。

Pete CORNISH

なるほど。ということはLike a Possumの音はPete CORNISH N.G.FUZZ(バージョン1)でないとダメなのではなかろうか… 悶々として過ごしていたがもう一度、べつの音源で「例の音」を聴く事になる。My Bloody Valentineの「MVB」のOnly tomorrowの音

これは絶対NG FUZZの音じゃなかろうか? そういえば以前ZVEXの人がアップしてたKevinのボードにPete CORNISH SS-3はあったけどN.G.FUZZはなかったからなぁ、と思っていたら

11 publishingのサイモンがこの画像をアップしていた。

やっぱりケヴィンシールズもN.G. FUZZをもっている。しかもV1のN.G.FUZZだった。しかしながら前記したonly tomorrowの音は54年のFender Tweed Deluxeフルテン+Uni-tronのサウンドらしい。でもやっぱりTweed Ampフルテンの音。ニールヤングのサウンドと合点があう。

ということで一番欲しいコーニッシュペダルなのに、なぜか何度も買い逃し、入手できないでいたNG FUZZをついに手に入れた。

その音は自分でもびっくりするくらい、欲しかった音そのものだった。

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