TEXT : YOSHI MURATA

VINTAGE TONE BENDERというカテゴリにおいて、最も生産数が多いペダル… すなわち、最も入手しやすいペダルはおそらく「MARK IV」でしょう。
SOLA SOUNDブランドはもちろん、PARK、CARLSBRO、CSLなど、様々なOEM品が存在します。

外観はCSL以外、ほぼ同じ筐体を引用。基板の内容もほとんど同じ様に見えますが、実際には「仕様違い」が存在します。その辺りはこちらのサイトで追加していくとして、ここではその違いは割愛します。

ちなみに私もMKIIIとMKIVの違いをはっきりと認識してはいなかったのですが、よくよく考えると「TONE BENDER MKIII」と正しく表記されていたのはVOX TONE BENDER MKIIIだけだと思います。これは同じくVOXブランドのTONE BENDER MKIIの後に発売されたTONE BENDERだから、という事になります。どちらが先に発売されたかは微妙なのですが、同じ筐体を流用したシルバーのROTOSOUND FUZZもMKIIIと言っていいでしょう。それ以外にはMKIII表記のモデルはないと思いますので、実際にはSOLA SOUNDのTONE BENDERはMKIVと呼称するのが正しいのかもしれません。とはいえ、このMKIIIとIVの境界線は非常に曖昧です。

例えばこのPARKブランドのFUZZ SOUNDもそうです。
よく見かけるMKIVファミリーかと思いきや、実は大変珍しい仕様を持っています。

このペダルはPARK FUZZ SOUNDの最初期モデル(2KNOBバージョン)の直後に製作されたものだと推測されます。その理由は

  • VOXおよびROTOSOUNDのMKIIIと同じくリバースボード(基板)である事
  • ゲルマニウムトランジスタ(SBT/サーフェイスバリアー型)にカラーチェックが入っている。その後の同タイプトランジスタと構造/外見も簿妙に異なっている
  • HUNTSやERIEなどのコンデンサを採用している
  • 抵抗の種類
  • ジャックが丸型のCLIFF PRODUCT(ENGLAND表記)
  • SOLA SOUND 18V POWER BOOSTなどと同じく大型のゴム足を採用している点、
    などが挙げられます。

トランジスタに関しては、後年の物などでOC71のプリント入りが見られる事もあるようですが、基本的に「Mullard」などのブランド表記がありません。

このPARKに搭載されたトランジスタにも一切の表記はありませんが、この SFBトランジスタを50年代に作り出したのはPHILCO(流通はSPRAGUE)であり、MK III/MK IVに搭載されていたのは、おそらくSTCブランドの「2NXXX」だったのでは?と推測しています。このあたりはもう少し検証する必要がありそうですが、何れにせよマニア筋に言わせるとこのチェックマーク入りのSFBトランジスタはミリタリースペック/または選定品であると言うこと/ローゲインであり、通信やコンピュータ関連で使用された高性能トランジスタである、と言う事でした。後年のMK IVに搭載されたトランジスタにはチェックマークがありません。

余談ですが、VOX TONE BNEDER MK IIIの初期型(リバースボード)にはブラックグラスのMullard OCトランジスタや丸型のRCA?タイプのトランジスタも搭載されていました。

サウンドの傾向

と言う事でこのFUZZ SOUNDはスペック的に「TONE BENDER MK III」と言って良いと思います。音色的にもシルバーのMK IVシリーズに比べると飽和感のあるサウンドで、倍音が豊かな歪みが特徴です。これ以降のPARK FUZZ SOUNDを2−3台チェックした事がありますが、もう少しディストーション的な締りのあるサウンドだと言えます。この個体はFUZZ然としたサウンドなので、MKIIIとIVとで音の違いがある事を認識させてくれます。

サウンドチェック動画は後ほど追加される予定です。

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