1966年モデルから若干仕様が変更された1967-68年ごろの個体。1966年のThin Font FUZZ FACEをV1.1とするとBold FontがV1.2(印刷が変わっただけ)そしてこの時期のFUZZ FACEがV2となるのでしょうか。V1とV2、基板やパーツはほとんど同じなのですが、外見などに変更点があります。製造年代に関してはポットが交換されており、そこからは推測できません。しかしながら筐体の仕様、基板の仕様などからみて67-68年に製造されたとみて良いかと思います(恐らく68年だと思われます)

ARBITER ENGLAND 1966 FUZZ FACE/NKT 275ブランド名はARBITER ENGLANDで口の中(ブランド名部分)はブラックで塗られています。しかしながら初期モデルとは筐体に若干の変化が生じている点に注目。ケースの頂点部分がやや平らになり、さらに裏蓋を留めるビスの受け部分が凹んでいます。実はこのスペースには裏蓋を留めるスクリューに加えてアルミ製の(筒型)チューブが入ります。このチューブはスクリューを正確に筐体にセットするために考案されたものと推測され、この仕様は1969年頃までの多くの個体で見ることができます。しかしながら多くの個体でアルミチューブが欠品しており、所有者の皆さんでもアルミチューブの存在をご存知無かったという事も多いのではないでしょうか。

さらにこの個体はスクリュー(ネジ)自体が交換されています。恐らくバックパネルを固定する際にスクリューを強く締め過ぎてしまい、受け側が「なめて」しまった為、一回り径の太いスクリューに交換された様です。V1のスクリューとの違いをチェックしてください。

筐体に関してもう一つの特徴は内部から筐体を見るとVOLUMEとFUZZコントロールの間にもう一つのコントロールが追加される場合の土台スペースが用意されている点にあります。これはARBITERのTREBLE and BASS BOOST PEDALにこのケースを流用する際に “PLUS”のコントロールを配置するためのもの。ちなみにこのスペースは後年のモデルでは少しだけスイッチ側に移動します。

さらに、この個体はノブが交換されていました。手持ちのTREBLE BASS BOOST FACEのノブを取り付けて撮影しています。基板を固定しているビスは頂点が平らなタイプで、V1と異なります。ジャックは1966年モデルと同じくシーホース・マーク入りのRENDAR INSTS. LTD / MADE IN ENGLAND製。ポットはすでに補修のため交換されており、おそらく70年代のポットが採用されていました。しかしながらルックスが良くないのでCITIESに交換。本来、VOLUME POTは500Kオーム、FUZZが1Kオームですが、VOLUMEが470Kに変更されています。

フットスイッチも1966年と同じBULGIN ENGLANDの6PDTを採用。2022年現在で約56年前後経過していることを考えると、いつ壊れてもおかしくないと言えます。この個体も入手時に6個の端子の1つのリレーだけが接触不良(バイパス時に音が出ない)の状態で、残念ながら交換するしかない、と思っていました。しかし、他の4端子に問題がないのでもしかして?そこで無理矢理に洗浄。現在は復旧しています。バッテリースナップはグレーのファイバー製で雌側がブラス、雄側がニッケルプレートという仕様。この仕様は現在でもKEYSTONEで採用されている事から、もしかしたらオリジナルのバッテリースナップもKEYSTONE製かもしれません。このスナップも50年が経過し耐久性が危うく、接触不良やノイズ問題の起因になる事が多い部分。交換しても良いのですが、使えるのであればキープしたいという事で幾度となく洗浄。余計な問題を派生させない為にもバッテリーはクッションなどで固定する様にしています。これらの補修の際にD*A*Mのリペアを参考にワイヤリングをまとめています。これはノイズ対策としても有効です。基板は66年に比べると少し色の濃いベークライト製。

トランジスタはNKT275。それぞれの赤いポイントが確認でき、巷では「RED DOT」などと呼ばれています。これはおそらくANALOG MANが言い出したことなのでしょう。確かに「レッド・ドット」そして「ホワイト・ドット」などが存在する様ですが、少なくとも66-68年頃までのFUZZ FACEではホワイト・ドットは使用されていません。さらにこの赤い点に重要な事実があるらしき事が最近わかりました。これは現在リサーチ中なのでここでは明記しません

他に基板上では8.2Kの抵抗と2つのコンデンサが交換されています。これはおそらく真面目なリペアマンの手により修理目的で交換されたのだと推測できますが、入手時はあまり良い選択とは思えものだったので、入手後に再度交換。ところが低域が強くなり過ぎてしまった(恐らく22μFの抵抗)ので今後調整要。2.2μFコンデンサはブランドよりも容量を精査すべきかもしれません。

ムラードのチックレット型(ひよこ)コンデンサもFUZZ FACEではおなじみの仕様。この箇所のコンデンサは後期型ではトロピカルフィッシュ・タイプが採用されていますが、同じくMullard製。しかし前記した2.2μFと20μFはMullardではない。この使い分けはVOX CLYDE WAHでもおなじみのコンビネーションですね。この辺りを見ると、当時の電気回路のデザイナーは回路のデザインとパーツのチョイスに何か一定のルールがある印象。もちろん入手できる部材(供給先)がそれほど多くなかったというシンプルな理由もあるでしょう。

iPhoneで撮影し、マイクの音を使用しています。デッドな部屋で撮影。一つのサンプル程度に。ギターは1964年のフェンダー・ストラトキャスターで、ピックアップはK&TのS64を搭載しています。

DATA:

Q1 9.28mm
Q2 8.98mm
バックプレート厚 0.9mm
筐体の厚み 3.8mm – 4.7mm